裸
つい最近のような
今から20年前
フィジーの離島に来てなければ
今の僕はない
絶海の紺碧のどこまでも深く見えない海
日が傾くと寒いかぜが吹き付け
夕闇が迫るとさらになんとも言えない
恐ろしい気を満たす
まるで果たし合いの波の圧
電線もビルもお店もない島には
霧のかかる緑の山があり
そのたもとで波は崩れては消えていく
数億年、数十億年の全ての時間を見
この場所で巻き込んでは崩れる波動が山にこだまする
ずっーと見てきた何かがこの場には古来からある
そんな海の中にもさんごや魚たちがいる
必死に泳ぎ
帰ることばかり気になり
帰れるのか心配な海も
彼らには美しい宇宙
轟音で崩れる波と泡が
海の渓谷にそって白い泡となり降り注ぐ
息も出来ない水中で
波に巻かれても誰も助けなこない
見てはいけない時間を見ていると
自ずと自然に心が無になるざる得ない
人間の全てを捨てて
正直にここまで泳いでこなければ
わからない時間が僕を育てたというか
変身さえていく
人間は小さな邪魔者だな
と
クスクス笑う
海へ裸でいかなければ今はない