自然美
書にはかならず(美)がなければならぬ
達者とか立派だといっても
人品賊しきものには自然美という(美)は
そなわらない
風流とか雅とかいうようなものがなくちゃならぬ
そういうものは
どこから生まれて来るかといいますと
やはり俗欲のない所からうまれてくる
俗欲の旺盛なものは、いわゆる俗人であります
簡単にあれは俗物だからといいますが
そういうものから
雅とか、美とかいうゆなものは生まれて来ない
俗人というものは、自然美なんかに刺激される所は少ない
ようであります
自然美にみとれて
物質我欲を忘れてしまうというようなことは
ま俗人にはできない
出来ても程度問題であります
ところが常終始俗的なことに余り感興をもたないで
とにかく自然美をみつめている
自然に親しむ機会を望んでいる人が
本当の風流人であり
また雅人であるように思われます
至った人というのは
自然美に対して注意深い人である
北大路魯山人 魯山人書論 平野雅明編より