養殖ふぐ
島の子供達も日曜日になれば、近所のだれかの漁師の船で島へ渡る。
朝から日が暮れる迄、魚を釣り、潜って過ごす。
そんな子供達を大人達は、静かに浜で見守っていた。
捕った獲物は、宝物でおいしい料理となる。糸を垂らせばすぐに釣れる。
こんなくさふぐもその場でさばいて、刺身で食べる。
都会のふぐ屋で出される、海へホルマリンを撒いて、大事に育てた養殖の高級トラフグとは全てが違う。
カラフルな魚はベラの仲間。
関西から東では市場には出ないが、この地方では夏の白身のごちそうだ。
醤油とジャガイモとタマネギを鍋で煮てつつく。
これを「にぐい」と地元の人は呼ぶ。
とれた分で十分なわけだが、漁も田んぼもたがやさない我々は、
お好きな時間にクーラーの効いた車でスーパーに行くのだが、
これもやはり、地球との距離が生まれるのも無理はない。
我々とて妙に便利な町に飼われた、養殖もの。
南の島々と同じく、日本にもこうした事が出来る、美しい場と人がいるのだ。