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大潮で海の水が引き、浅くなった珊瑚礁に村の女性達が漁に出てきた。
部屋から見える沖の波は今日は小さい。もっとも体の疲れをとりながら、チューニングしたかった。夕暮れ雲が不思議な形になり、夜になると満月が流れる雲から顔をだした。
夜むかしこの村に住む、ヤサワ島からきたモモという大工のおじいさんを憶いだした。
物静かだが、いつも同じ場所で、澄んだ目と笑顔でよく海をみながら話をしたものだ。
かれがそのとき、誰かが捨てた航空会社の小さな袋に、海で拾い集めた貝でネックレスをくれた。とにかく器用な人で、なんでも自分で作ってしまう。
今回はそのお礼にモモが好きだった羊羹を持ってきたが、残念ながらモモは数年前ヤサワ島に帰ってしまっていた。カラという釣りの好きなおばちゃんにも釣り針をもってきたが、本島に出稼ぎにいったらしい。時間は流れ、僅かだがこの島にも少しづづ文明の波が打ち寄せているのか。山で妖精を見た話や、魚の話などたくさんのいい思い出もこの村にある。
しかし今も波音と風でヤシの葉がさらさらと聞こえる音、とりの声しかここには無い。