去年と今年

誰とも話さず、神輿から付かず離れず、担いでいる男の人がいた

寡黙な雰囲気から漂う独特な目

今年お宮で、時話かけてみた

去年のお写真もあり、お渡ししたいのですが

よければ送り先を教えてくださいますか?

はい

いいですよ、いいんですか

ありがとうございます

自分は下村と言います

地元でしたが4年生までで

菅原文太のような話し方と、よく通る声

写真とお兄さんにお線香をお送りすると

電話がきた

ありがとうございます

あの夜

自分は遠くに引っ越しても

兄貴とこの神輿に来ていて

その兄貴が数年前死にまして

兄貴の写真を持って一人で担ぎに来てるんです

深いな・・・

そうなんですか

思い出が人を神輿が癒し、何かを忘れないようにさせている

あおいしたいですね。

そして今日再開しました

無口ながらも、満面の笑みで

自分は1日神輿についていて

今年は足がもうやばかったです

兄貴もこの氷川の神輿が好きで

誰でもかつげて

江戸前とかきまりもなく

自由に右に左に担いで

とにかくこんなでかい神輿はありませんよ

だから自分も、生きてる間は氷川だけの神輿に

来たいと

子供の頃、町会の小さな子供神輿を担ぎまして

子供は危ないから大きな神輿は禁止でしたから

いつかあの大きな神輿を大人になって

担ぎたいな〜と

それで夢だった大きな神輿を

兄貴とずっと担いで

夢でしたから・・・

台風の日も自分は出ないから

家にいたら

兄貴が横浜から氷川に来たら出るから

来いっ!て言われましてね

故郷はいいですね

ほんとですね

氷川神社とお風呂屋さんだけは変わってないですね

ほんとですね

神社の祭礼がこうして人をつないで

思い出を

なんていうか

残していってくれますから

日本っていいですね

自分も酒は飲みません

と二人で天ぷらそばを食べ

また来年お会いしましょう

と別れました

それぞれの夢があり

たいそうな大きな夢でもなくとも

子供心の夢を大切に叶えた男の話し

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